まつこの庭

私の庭に咲いている花や庭にやってくる鳥や虫たちのことを記録していこうと思います

花の図書館(5)そらみみ植物園

 花の図書館の5回目は、西畠清順(にしはたせいじゅん)さんの植物にまつわるエッセイ集です。そらみみ植物園と名付けるぐらいですから、世界を旅する中で出会った耳を疑う様な珍しい植物ばかりを取り上げています。

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 西畠清順さんは花と植木の卸問屋の5代目で、日本全国、世界数十カ国を植物を求めて飛び回る現代のプラントハンター(17世紀から20世紀中期にかけアジアや中南米からヨーロッパへお茶や香辛料、珍しいランなどの花を運んだ職業)と言われる人です。植物を使った大掛かりなイベントのプロデュースも行い、テレビなどでもよく取り上げられています。

 このエッセイ集は、9章から成り立っています。

   1 おそるべき才能をもった植物

   2 イラっとする植物

   3 記録より記憶に残る植物

   4 秘境・ソコトラ島の植物

   5 マジで!?な植物

   6 残念な植物

   7 ムラムラくる植物

   8 愛を語る植物

   9 世界を変えた植物

 どの項目も西畠さんの機智に富んだ見出しが付けられていて、思わず「おもしろそう!」と言ってしまいそうです。それらのたくさんのおもしろい話から3つだけ紹介します。

 

 1つ目は「おそるべき才能をもった植物」から「ヒマラヤ原産の温室」です。その温室はネパール東部とチベット南東部のヒマラヤ山脈の標高3500~5000mの岩場に見られるそうです。

f:id:myuu-myuu:20181215165234j:plainえっ!どこが温室なの?とこの写真を見て思いますよね。これはセイタカダイオウと言う植物ですが、植物そのものが温室植物なのだそうです。セイタカダイオウと言う植物は、自ら半透明の葉をテントのように張って、背の高いドーム状の温室を作りその中の空間を温めて、自分が咲かせた大切な花を育てているのだそうです。ちなみに温室の中は外気よりも10℃ぐらい暖かいそうです。ヒマラヤの厳しい寒さに適応し生き抜くための植物の知恵ってすごい!と思わせられますよね。こんな話がおそるべき才能をもった植物の中にはあといくつか載せられています。

 2つ目は、「マジで!?な植物」の中から「ウスネオイデスの正体」です。ウスネオイデスは私の温室にもいくつかぶら下がっています。

f:id:myuu-myuu:20181215171001j:plain左側の植物がウスネオイデスで、右側の人が西畠清順さんです。

 ウスネオイデスは、メキシコ原産のパイナップル科の植物で、別名「サルオガセモドキ」と言います。私はウスネオイデスはエアープランツで鑑賞植物と思っていましたが、メキシコでは見た目で想像出来うる限りのいろいろな使い方がされているそうです。古くは左官や陶芸の材料として、戦いの時は矢の先端に巻いて火をつけ武器として、煎じて頭痛薬として、現代ではクッション材としてフォード車のシートに使われたり、日本ではフラワーアレンジの素材として使われたりするそうです。メキシコではクリスマスになると街角で袋詰めされたウスネオイデスが売られるそうですが、何と家のキリスト像のまわりにウスネオイデスを敷き詰めて聖域的な場所を作り、聖夜を迎えるのだそうです。

 私はウスネオイデスは空気中の水分を吸って生きているエアープランツと初めから認識していましたが、メキシコの人は使い方がほとんど乾燥している状態を想定しているのでウスネオイデスを植物とは認識していないのではないかとさえ思ってしまいます。それが「マジで!な植物」ということなのでしょうか。

 3つ目は「残念な植物」から「ああそうかい」です。「ああそうかい」って何?

f:id:myuu-myuu:20181215174638j:plainああそうかいは「アアソウカイ」という植物なのです。

 アアソウカイはキョウチクトウ科の植物で、全身を長いトゲで覆い、白くてかわいい花を咲かせます。なぜこの植物がアアソウカイという名前を付けられたかについては、知ると「ああそうかい。」と言いたくなるほどがっかりするので、筆者は「ネットで検索しないで欲しい。」と結んでいます。

 そう言われちゃうと調べて見たくなるんですよね。

 ああそうかい(アアソウカイ)は漢字で書くと「亜阿相界」と書きます。意味は、この植物の原産地がマダガスカルで、アジア(亜細亜)とアフリカ(阿弗利加)の境界にあるということから、小説家でありサボテン研究家である龍胆寺雄さんという人が命名したそうです。本当に「ああそうかい。」と言いたくなりますよね。

 

 「そらみみ植物園」では、61の植物が取り上げられていますが、読むと「広い世界にはこんな変わった植物もあるんだ。」「こんな凄い知恵をもっているんだ。」ということをしみじみと思わされます。比喩表現がおもしろく楽しい文章で、植物の好きな人も植物にさほど興味の無い人も西畠植物ワールドに引き込まれていくと思います。