花の図書館の6回目は、有川浩作「植物図鑑」です。
有川浩は、映画やTVでおなじみの「図書館戦争」「三匹のおっさん」「フリーター、家を買う」などの作者です。
初め文庫本コーナーで植物図鑑を見つけた時は、これはきっといろいろな花に例えられた女の人が登場する短編集に違いないと思いました。ところが、実際は20代の男女のラブコメ風小説だったのです。2人の出会いからその後の展開が、まるで現代版「ツルの恩返し」の逆バージョンといったところでしょうか?
主人公は失恋したばかりの27才の会社員さやか、さやかはマンションの前に行き倒れていた青年イツキを拾って(?)、一緒に住むようになります。イツキは宿を提供してもらう代わりに料理などの家事を受け持ちます。このイツキがツルの役回りをしていることになり、機織りの代わりになるのが料理というわけです。しかもイツキは野草にやたら詳しいだけでなく、それらをおいしく料理する腕をもっているのです。植物図鑑には、野草採集と野草料理の日々がレシピ付きで物語れられていきます。
この植物図鑑には約30種の野草が出て来ます。写真も載せられているので、植物図鑑の様相は呈していますが、野草図鑑と言った方がいいかもしれません。
野草と言うとおひたしや天ぷらにすることが多いと思いますが、炒め物や酢の物、和え物、煮物など工夫次第でいくらでもおいしく食べられるようです。フキノトウというと天ぷらが一番おいしいと思われているそうですが、天ぷらが一番美味しくない食べ方なのだそうです。フキ味噌とかフキご飯の方がずっとおいしいそうです。セイヨウカラシナとノビルを使ったパスタ料理も意外性がありました。「今まで食べたパスタの中で一番好きかも!」とさやかにいわせるほど読むだけでも美味しそうに感じました。他にもえっ!こんな野草も食べられるんだ、こんな料理方法も有るんだと驚きや発見の多いベジタリアン料理集という側面も持っているこの本は、植物が好きな人だけでなく、料理の好きな人にも楽しめると思います。
助けた女の人は実はツルだったという「つるの恩返し」のオチにあたる部分は、「植物図鑑」ではどうなっているか、イツキが何者だったのかは、自分で読んでみて下さい。